2012年2月22日に、福島県いわき市立久之浜第一小学校で、6年生の皆さんを対象に、再生可能エネルギーを題材にしたコミュニケーションアートのワークショップを開催しました。
ワークショップを終えた後に、教頭の櫛田祐子先生と、6年生の担任の大和田まひる先生、安藤知広先生に、ワークショップの感想や卒業を間近に控えた子どもたちへの思いなどを伺いました。
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ワークショップの感想を
(安藤先生) 子どもたちは、思ったよりもワークに取りかかるのが早かったです。事前のガイダンスが理解しやすかったのだと思います。これまでに、パステルを使ったり、自分自身の考えや思いを表現するといった経験をしていることもありますが、再生可能エネルギーについての授業や、鑑賞・描くといったコミュニケーションアートについての説明がわかりやすく、実際の作業がイメージできたのだと思います。
(大和田先生) 今回は太陽がテーマでした。太陽はみんなが知っているけれど、直接手にしたり触れたりしたことがある人はいません。誰もが知っているけれど、本当のところはわからない― そういったものをテーマにして描くのは初めてです。これまで、自分の好きなものや想像したものを描くといった経験はありますが、太陽はちょっと違いますね。そういった点で、初めての経験だったと思います。
担任の先生方もワークショップに参加しました
(安藤先生) 最初に考えていたのとは違う出来になりました。私が見ていると子どもたちも気が散るので、子どもたちのほうは見ずに自分のワークに集中しました。
(大和田先生) 少し中途半端な感じです(笑)。やり始めるとキリがないものだとはわかっていますが・・・。決められた時間内で仕上げるようにペース配分して、“まぁ、いいか!”と思える出来にはなりました。
子どもたちの様子から感じたこと
(大和田先生) ワークの時間内はずっと、集中して自分と向き合うことができました。これが1年前や半年前なら、友達と話しをしたり周りの様子をうかがったりして、なかなか集中して取組むことができなかったと思います。
描くワークは、下書きなしで、ぶっつけ本番で自分を表現するものですが、迷いなくすぐに集中して取組むことができたのは、作文をしたり友達の考えにコメントしたりするといった“自分の言葉で表現する経験”を積重ねてきた結果だと思います。
(櫛田先生) 子どもたちには、自分を大事にし、自己を表現する力を身につけてもらいたいと思っています。この学校では、今回のワークショップ以外にも、さまざまな分野のプロ(専門家)の話を聞く機会を作ってきました。プロの話を聞くことで視野を広げるためです。また、さまざまな体験を重ねることは、自分の心を見つけることにもつながります。今回は、卒業を控えたこの時期ですので、これまでに体験したさまざまなことについて思いを巡らせ、自分と向き合うことができたのではないかと思います。将来について考える第一歩にもなるのではないでしょうか。
(大和田先生) この小学校は、2011年4月から10月まで、別の学校の教室を借りて授業をしていました。その期間は「みんなで頑張ろう」「6年生として下級生の面倒を見よう」と団結する意識が強かったように思います。もちろん、ひとりひとりが力を発揮することが大事ですが、その力を合わせて“みんな”で頑張ろうという気持ちが優先されていました。でも、ここに戻ってきたら、以前よりもひとりひとりが“個”を出すようになりました。自分たちの場所に帰ってきたという安心を感じたのかもしれません。
ですから、戻ってきた当初は44名全員一緒に1クラスでしたが、3学期からは2クラスに分かれました。そういうこともあって、“みんな”から“個”に戻って、自分に向き合うことができたのだと思います。
再生可能エネルギーの授業では、子どもたちの知識がとても豊富でした
(櫛田先生) エネルギーについては3年前から、高学年を対象に体系的に学ぶようにカリキュラムに取込んでいます。通常の授業のほか、エネルギーに関する施設の見学や企業の出前講座なども行いました。
(安藤先生) ツバルは教科書にも出てきますし、北極をテーマに学習している子どもは、北極の氷が減っている現状やホッキョクグマの置かれた状況について、とても関心を持って聞いたと思います。
クイズ形式もいいですね。最近授業でやった内容もクイズに出てきたので、みんな積極的に参加していました。ただ、映像を映し出した画面が少し小さく、後ろの子たちに見えにくかった点が残念で、プロジェクターで大きく映し出すともっと良かったと思いました。
環境教育としてのワークショップ
(大和田先生) 環境問題は決まった答えがあるものではありません。平和問題と似ています。子どもたちは、平和に関する授業でユネスコ憲章(国際連合教育科学文化機関憲章)の一節を学びます。ユネスコ憲章の前文には「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」とあります。
今回のワークショップでは「自分たちの心の中の太陽」がテーマ(*)でしたが、これは、「ひとりひとりが心の太陽を持つこと、そしてその太陽の灯を絶やさないこと」が大事で、ユネスコ憲章でいう、ひとりひとりが平和のとりでを築くことが大事であることと同じです。6年生はこれまでにさまざまな経験をしていますから、学んだことを応用して自分の中でしっかりと理解することができたと思います。環境問題の1つの答えになるのではないでしょうか。
大和田まひる先生(6年1組担任)・安藤知広先生(6年2組担任)・櫛田祐子先生(教頭)
久之浜第一小学校では、自宅から離れて仮設住宅や借上げ住宅で生活している子どもたちもいるそうです。バスを利用しての通学となるため、帰りのバスの発車時刻までの限られた時間でのワークショップとなりましたが、その分、密度の濃い時間になったように思います。私たちの訪問を前向きに受け入れ、笑顔で迎えてくださった先生方、6年1組・2組の皆さん、ありがとうございました。
* 再生可能エネルギーをテーマとしていますが、子どもたちがより深く理解しコミュニケーションアート(思いや考えの表現・創造)を楽しめるよう、「自分たちの心の中の太陽」としました。再生可能エネルギーには、太陽光・水力・風力・バイオマスといったさまざまな種類がありますが、これらのエネルギーを生み出すには太陽が必要であることを事前ガイダンスの中で説明しています。