2011年3月10日夕方、翌日(3月11日)の「そらべあ発電所寄贈記念式典」に先立ち、芸術学園幼稚園(高知県高知市)園長の児玉富貴子先生と事務局長の大石真司さんに、今回のそらべあ発電所へ応募したきっかけや日ごろの園の教育方針などについてお話を伺いました。
「応募のきっかけ」を最初の質問と考えていましたが、まずに目についたのはたくさんの似顔絵・・・
教室の窓には子どもの似顔絵がたくさん飾ってあります―
(園長) あれはね、私が描いているんです。卒園する子どもたちに毎年プレゼントしているんですよ。私はもともと中学校の美術の教師で、そのあと小学校の校長を14年務めてこの園にやってきたのですが、これまでに卒業生や卒園生に延べ800枚くらいの似顔絵を贈ってきました。
似顔絵を描く時間は、子どもと一対一で向かい合う時間です。一対一で話をして、内面を知ってから描きます。普段は、なかなか、ひとりひとりと話をすることが難しいのですが、こうして触れ合う時間を持つことで、ちょっとでも子どもを知ることができるようにしています。
年長さんにもなると、だいぶ話もうまくなって、こっちの言うこともちゃんとわかるし、中には家庭の秘密を話してくれる子もいます(笑)。
屋根に設置した「そらべあ発電所」についても理解できそうでしょうか―
(園長) 「そらべあ発電所」は2月後半に設置工事がおわり、1週間ほど前の3月3日から稼動するようになりました。子どもたちには、稼動し始めてから教えるようになりましたので、「そらべあ発電所」を通じた環境面での教育はまだ始めたばかりです。
芸術学園幼稚園の子どもたちは、普段はどんなふうに過ごしているのでしょうか―
(園長) 感動が一番大事な時期ですから、いろんな行事を通じて、たくさんの感動を与えられるように取組んでいます。
外部講師を招いて、音楽を楽しんだり、体操でスポーツの基礎を身につけたり、図画工作をしたりします。また、英語は外国人から学びます。広く浅く、いろいろな体験をさせますが、得手不得手もありますので、無理のない範囲でできることをどんどん伸ばしていきます。そして、劇の発表会や音楽会、運動会など、季節ごとにたくさんの行事をします。
園に隣接した西側の敷地では、タマネギやエンドウ・・・この時期はイチゴなどを植えています。収穫後は、みんなで料理をして焼き芋パーティやカレーパーティなどで楽しく食べながら、食育につなげます。年長さんには、自分で収穫した分の数を数えさせたりもしますから、計算の練習にもなります。昨年は東側の敷地も借りることができたので、田植えや稲刈りもやりました。もち米を植えたので、自分たちで作ったお米でお餅つきもやりました。「こんな、おいしいお餅は今まで食べたことがない」と、子どもや保護者から喜んでいただきました。
自分で育て収穫したものは格別ですね―
(園長) そうですね。それに、畑や田んぼの世話は、普段は園バスの運転手さんがやってくれています。無農薬でやっていますから、夏の暑い時期に地面を這うようにして草をひいたりする姿は申し訳ないと思うほどです。でもその姿は園児にも見えますから、草ひきをしないと稲に栄養がいかないことも学びますし、感謝の気持ちも生まれてきます。もちろん、最初から“ありがとう”とは言えませんが、“こういうときはなんていうの?”と問いかけると“ありがとう”という言葉が出てきます。そうして、だんだん自分からありがとうと言えるようになります。
高知は年間の日照時間が約2000時間と長いので、農作物もよく育つし「そらべあ発電所も」たくさん発電できそうです。
今回の「そらべあ発電所」設置先の募集には、どのようなきかっけで応募されたのでしょうか―
(事務局長) もともと、“市民発電所”を作ることを考えていたんですよ。出資者を募って、太陽光発電設備が作れないかと、2年ほど前から考えていました。そして、1年くらい前に県からのお知らせか何かで、「そらべあ基金」の「そらべあスマイルプロジェクト」を知り、さっそく応募しました。応募した直後の抽選では、はずれて残念に思いましたが、もともと自分たちの手で“市民発電所”を作ることを考えていましたから、自分たちで作る準備を進め、今回の当選通知の前日も“市民発電所”の実現に向けた会議をしていたような状況です。
では、今回の当選連絡で“市民発電所”の計画は中止に?
(事務局長) 中止にはなりません。この園の系列にもう1つ別の幼稚園がありますので、そちらのほうで、“市民発電所”の計画は進めています。
芸術学園幼稚園には一足先に「そらべあ発電所」が設置されたことになりますが、実際に稼動してみてどうでしょうか―
(事務局長) 計器には、リアルタイムで消費電力や発電量、購入している電力量などがわかりやすく表示されますから、見たら無駄な電気は消そうという意識が働きますね。多くの施設や家庭などでも、設置すべきだと思います。
今の子どもたちが大人になる頃には、自然エネルギーが当たり前の時代になります。
これをきっかけに子どもたちへ自然や環境のことを教えていきたい、そして子どもだけでなく保護者の方にも伝えていきたいですね。無駄な電気は消すといったように、気づいたところから変えていく、園だけでなく家庭でも節約を実行するきっかけにしていきたいと思います。
今回の寄贈先は、芸術学園幼稚園。
表現する側と鑑賞する側が感動を共有し合うことが芸術だと、園長先生は教えてくれました。自ら“市民発電所”の計画を進めるなど、環境への思いの強さを感じさせる大石さんと、音楽や演劇・体操など、さまざまなプログラムで感動を共有し合える場面を作り出す園長先生。
こんな先生たちに囲まれた芸術学園幼稚園なら、「そらべあ発電所」が、環境教育プログラムの1つとして、子どもたちと感動を共有できる芸術になる日も近いかもしれません。
児玉園長先生、大石さん、貴重なお話をありがとうございました。